緊張で脈拍が上がるのを感じる。握るこぶしに力が入り、
額には汗が浮かび始める。この状況、サッカーのフィールド上ではない。飛行機内での私である。
何を隠そう、私は飛行機が苦手である。いや正確には苦手になってしまった。
初めて飛行機に乗ったのは中学生の時。その後は旅行やサッカーの遠征で度々乗る機会があり、
怖いなんてことは考えたこともなく、すこぶる快適なものだった。
しかし、そんな私の価値観は、ある一度の体験で180度、変わってしまった。
99年、日本代表が招待された南米選手権に出た時のことだ。ボリビアとの1次リーグ最終戦を戦うべく、
私たち日本代表、そして同じ組のペルー、ボリビア、そして開催国のパラグアイの4チームを乗せた飛行機は、
国境付近の空港に向かっていた。
私は左の窓際の席に座っていて、そろそろ着く頃かな?と窓の外を見た。
「まだ雲の上か」と思った途端、雲の切れ間すぐ下に森が見えた。雲と思っていたものは濃い霧だったのだ。
途端にパニックに陥った。「大丈夫か? この飛行機」と思って周りを見ると、左側シートの乗客は皆、ざわついていた。
すると、飛行機は大きなエンジン音とともに、急に左旋回を始めた。言葉を失った。
左の翼が地面にぶつかりそうに見えた。「もう駄目だ」。そう思った時、「ドシ〜ン!」
という音とかなりの揺れを伴いながら機体は着陸した。
完全に止まったときには、喜びの歓声があがり、
互いに見つめ合い、安堵(あんど)に顔をほころばせた。まさに言葉の壁を越えて心が通じ合った、そんな瞬間だった。
それまではサッカーの本場、南米の強豪国との対戦、世界のトップ選手ということで多少、気後れしていた。
だが、彼らも同じ人間なんだ、そう思ったらそれまでより、気持ちが一歩前へ踏み出せた感じがした。
そして、その後のボリビア戦では、肩の力が抜け、自分でも納得のいくプレーが出来たのだ。
敬意は払えども恐れず、気合いは入れども気負わず、勝負の世界に生きる者として、
心の在り方を改めて学んだ思い出深い大会、遠征である。
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