夏が来た! 目に映るのは、まぶしいほどの緑や入道雲。
聞こえるのは、夏休みに入った子供の声や風鈴といった夏の音。そしてスイカなどの夏の味覚…。
とにかく五感で夏を楽しむ。不思議な開放感とともに、ワクワクした気分にさせてくれる。
私にとって夏はそんな季節である。
が、しかし、そんな夏もサッカーをするとなれば話は別だ。
言うなれば、それはもう「恐怖」である。
夏場の試合、人によって個人差はあるが、僕の場合、まめに水分補給をしても
1試合で3〜4`は体重が落ちる。練習でもだいたい2`ほど。熱を帯びる身体を冷ますべく、
全身の毛穴はほぼ全開状態になる。
朝起きて真っ先に思うのは「今日の天気はどうかな」。夏は暑いもの、暑いからこそ夏。
分かってはいるが、「練習中だけ涼しくなれ」というのが正直な気持ちだ。
しかし、考えても始まらない。先日も気持ちを切り替え、玄関を出た。
待っていたのはセミの鳴き声だった。「ミーンミンミンミーン」。大音量の合唱は、
見事なまでに暑さを増幅させた。思わず「うえ〜」と言い、外へ出ると、
意外なものが目に入った。セミの抜け殻である。
それはとても奇麗だった。玄関先の木にくっついていたが、
よく見るとかなり上の葉の裏にもあった。私はセミを好きではない、
むしろ嫌いな虫ベスト3に入る。
が、つい足を止めて見とれてしまう、それくらい見事な抜け殻だった。
そして想像した。セミの幼虫が土からはい出て、木を必死によじ登る姿を。
そして考えた。セミの幼虫は地中に数年から十数年いる。成虫となってからは、
1週間の命とも言われている。
暗い土の中にいる幼虫は、自分が空を飛べる事を知っているのか。
それとも、苦しくて、もがいているうちに外に出て木を登り、気がつけば飛んでいるのか。
外へ出れば、わずかな命、それを覚悟しているのだろうか。
いずれにせよ、セミは暗い土の底をはい上がり、光を浴び、空まで飛んでみせる。
騒がしい鳴き声は、子孫繁栄のために異性を呼ぶためだけでなく、
命を完全燃焼させる魂の歌なのかもしれない。
セミたちの魂のロックンロールを聴き、「今日もやったるぞ!」と自分に気合いを入れた。
*毎日新聞 夕刊(金曜日/月一回)コラム『サッカーマインド』に連載中。 |