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  「いざアジアカップ」 2007年7月13(金)毎日新聞夕刊に掲載

 日本人である! と心から意識した事はあるだろうか?  海外旅行中にみそ汁を飲みたくなる時? コンビにがないと何となく不安になったりする時?  他にも多くあるかもしれない。

 私はサッカーの大会で海外に行った時、意識することが多い。中でも特に思い出深い大会がある。2000年のアジアカップである。
 私にとって2000年は忙しい年だった。Jリーグ、カップ戦、日本代表とほぼフルに活動し、 シドニー五輪にオーバーエージ枠で出場、そして2000年の集大成、締めくくりがアジアカップだった。

 当時、開催地レバノンの国境付近では戦争中という情報が入っていた。平和に関する意識の違いを強く感じ、正直怖いと思った。
 ところが、いざ行くと、宿舎のある首都ベイルートは、海を望むきれいな街だった。 ビルの壁に弾痕など戦争の傷跡は見られるが、人々も街の空気もとても明るい。 ただ、スタジアムから200キロほど離れた所でゲリラ戦が行われている、と聞いたときには驚いた。
 またホテルの部屋の壁が赤と白の太いストライプだったのには落ち着かずに参ったが、大会にはとてもいいムードで臨めた。

 当時の日本代表を率いたのはフィリップ・トルシエ。五輪で8強に入りし、波に乗る日本代表は1次リーグを難なく突破した。 フラット3を基本戦術にした守りも安定し、チームとしての成長を一試合一試合実感できた。その結果、日本は優勝。
 やり遂げた最高の喜びとともに、こみ上げてきたのは、長い遠征から日本にやっと帰れる!という安堵感だった。

 素晴らしい思い出を刻んだレバノンを後にし、帰りのロンドン、ヒースロー空港でのこと。 フライトまで時間があったので、空港内をうろうろと歩いていたら、見知らぬ外国人がやってきて言った。 「おめでとう。日本はいいプレーをしていた。いいチームだ!」と。
 その言葉で改めて優勝した喜びがわいてきた。そして日本代表、日本人である事の誇りを強く感じた。

 今大会、選手として出場する事はかなわないが、一人の日本人として、日本人の可能性を感じる、 そして、誇りを持てるような戦いを見たいものである。


*毎日新聞 夕刊(金曜日/月一回)コラム『サッカーマインド』に連載中。


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